「今 世界には5億5000万丁の銃がある」
「ざっと12人に1丁の計算だ」
「残る課題は"1人1丁の世界"」
これは映画冒頭のシーンで足の踏み場もないほどの薬莢の中に立つ主人公のセリフです。
主人公は世界中の戦場に武器を供給する武器商人、ユーリー・オルロフ。右にも左にも、政府軍にも反政府軍にも、金さえ払えば誰にだって武器を売ります。
物語自体はフィクションのようですが、実在する人物・実際にあった出来事をモデルにして映画を作っているそうです。映画の最後には「本作は実際の出来事に基づく」と表記が入ります。
映画の中では一貫して武器商人としてのユーリーが描かれているのですが、ラストの展開には驚かされました。様々な違法行為を繰り返しながら、時には法の抜け穴をついて"合法的に"武器の売買をしていくユーリーも、遂にインターポールに逮捕されてしまいます。しかし彼は動じることなく取調室で捜査官に対して次のように言います。
「予言してやろう」
「ドアがノックされ外に呼ばれる。廊下には上官がいて、まず君の手柄を褒める。平和への貢献だと。そして表彰と昇進を告げる」
「次に私の保釈を命じる。君は抵抗する、退職も辞さないと。だが結局、私は保釈。容疑そのものが保釈理由だ」
「私は残虐な指導者たちと、仕事でつき合ってきだが、その何人かは君たち(米国)の敵の敵だ」
「最大の武器商人は君のボス。合衆国大統領だ。」
「輸出量は1日で私の1年分。証拠が残るとまずい取引もある。そんなときは私のようなフリーランサーに委託する。」
「だから、私を悪と呼ぶのはいい。だが君らにとって必要悪なんだ。」
そしてその予言通り保釈され、再び仕事に戻っていくユーリー。アメリカは表立って武器を売ることができない相手に対してフリーの武器商人を仲介して武器を売っていたのです。
「個人営業も繁盛しているが、最大の武器供給者は米・英・露・仏・中である。この5カ国は国連安保理の常任理事国でもある」との字幕が入りエンドロール。
関連映画・ブラッド・ダイアモンド
こっちはユーリーに武器の代金をダイアモンドで支払っていた独裁政権が、いかにしてそのダイアモンドを手に入れていたかが描かれている映画です。